勢いに乗った女子高生は怖い。いやただの女子高生ではない、出雲のイナズマだ。
「思った以上に力が出せました」。終局後、里見は自分に驚いたように話した。後手番では十八番の「ゴキゲン中飛車」を選んだ里見に対して、清水は執ように中飛車阻止という作戦に出た。「予想しなかった戦型になったけど、何とか乗り切りました」あえて居飛車にせず、意地で中飛車にこだわり、清水を根負けさせた。
夢の女流名人位戦に初挑戦で、いきなり2連勝。タイトル奪取に王手をかけた。5番勝負になった81年度以降、連勝スタートは過去16例。11度の3連勝決着を含め、いずれもタイトルを獲得(防衛7、奪取9)している。データ上は名人就位率100%だ。
偉大なる女流棋士への仲間入りが現実味を帯びてきた。17歳の里見が名人を奪取すれば1982年度の林葉直子(15歳)、85年度の中井広恵(16歳)、そして87年度の清水(19歳)に続く、10代女流名人の誕生だ。いずれも初挑戦初獲得を果たした3人は、里見が生まれる前の“レジェンド”。女流棋界にそびえ立ってきた厚い壁に、21世紀の新星が肩を並べようとしている。
3月2日に18歳の誕生日を迎え、高校を卒業する里見にとっては、“女子高生名人”という称号は今期が最後のチャンス。母・治美さん(48)は、「制服を着て対局するのも今回が最後。洋服選びが大変になると思います。スタイリスト? 私はセンスがないので、どうしましょうか」と新たな悩みも。騒ぐ周囲にも、里見は「(タイトルには)あんまり気を寄せず、次の対局まで、しっかり勉強していきたいと思います」。
進学はせず、プロに専念することに決めた女子高生は、受験に挑んでいる同級生と同じように、頭をフル回転させて春を迎える。
◆里見 香奈(さとみ・かな)1992年3月2日、島根・出雲市生まれ。森鶏二9段門下。6歳で将棋を始め、02年10月に女流棋士に。08年11月、16歳8か月の史上3番目の若さで初タイトルとなる倉敷藤花を獲得。終盤の鋭い攻めから「出雲のイナズマ」の異名を取る。島根県立大社高3年。
◆10代での女流名人初獲得
??▼林葉直子(1983年2月19日=15歳0か月) 初登場した林葉女流王将が第4局に勝ち3勝1敗で獲得。居飛車穴熊に構え、振り飛車の蛸島彰子女流名人を101手で下した。
??▼中井広恵(1986年1月20日=16歳6か月) 中井女流2段が、居飛車でじっくりと展開して123手で林葉直子女流名人を下し3勝1敗。初挑戦で自身初タイトルとなる女流名人を獲得。
??▼清水市代(1988年2月8日=19歳0か月) 清水女流2段が、中井広恵女流名人を118手で下し3連勝で初タイトル。戦型は両者相掛かり。清水が居飛車で中井がひねり飛車に構えた。
※段位、タイトルはいずれも当時
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